バカラの技術が飛躍的に進歩したのは、19世紀から20世紀にかけての数々の受賞と無縁ではありません。グラスや装飾品にとどまらず、大きなシャンデリアや家具、さらには噴水などそれまでクリスタルでは考えられなかったものを制作し、その芸術性や先進性、高い製作技術に対し1855年のパリ万博で金賞、続く1867年、1878年のパリ万博ではグランプリを受賞。バカラの名前は世界中に広がり、歴代フランス国王をはじめ、ナポレオン、ロシアのニコライ2世、インドのマハラジャなど、世界中の王侯貴族たちにも愛用され、“王者たちのクリスタル"と冠されるようになりました。
そして19世紀末から20世紀になると、ジャポニズムやアール・デコなどの芸術潮流が高まり、次々と新しいデザインが生まれてきましたがバカラはこれらも創作のアイデアとして取り入れていきます。この頃からバカラはフランス国内に限らず広く国外の優れたデザイナーを起用し始め、以来新しいデザインの可能性を広げるべく積極的に取り組んでいます。気鋭のデザイナーの個性と熟練した職人の技が出会い、クリスタルにシンプルな美しさを追求したバカラデザインが創造されていくのです。
クリスタルは、純白の砂(珪砂)、酸化鉛、カリウム、ソーダ灰と精製用の少量の参加金属によって作られます。クリスタルの特徴は、比重が重いことによる重厚感、光の屈折率が高いことによる煌めき、そして高い透明度を誇り、爪で弾いた時のピーンという共鳴度に優れていること。また、クリスタルはガラスよりも柔らかく、より複雑な成形やカットなどの装飾を施すことが可能です。バカラクリスタルの美の基本をなすのは、いつの時代においても何より「職人の手」なのです。バカラクリスタルは、今日でもそのひとつひとつが成形から検品まで多くの職人たちの手を経て生まれています。最高のクオリティでなければバカラと呼ばないという老舗の誇りがバカラの信頼となっています。
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