ロスチャイルドバードは、ハンガリーの名窯ヘレンドで古くから製作されている最もポピュラーなシリーズのひとつです。1850年にウィーンのロスチャイルド家の依頼により製作されたためにそう呼ばれるようになりました。ロスチャイルド家は初代のマイヤー・アムシェル(1744-1812年)がフランクフルトで開いた古銭商・両替商に端を発する世界的に有名な銀行家です。ロスチャイルド家は、ドイツ語読みではロートシルト(赤い盾の意)と言い、ワイン愛好家にはあこがれのボルドー5大シャトーのうちのふたつとして有名です。このマイヤー・アムシェルの5人の息子はヨーロッパの各支店を担当、ヨーロッパに一大金融網を築き上げました。ロスチャイルド家の紋章には手に握られた5本の矢が書かれており、この5人の息子たちの結束を表しています。その中でも特にロンドンの初代ネイサンは独自の情報網で、ワーテルローの戦いでのナポレオン敗北の情報を入手し、紙くず同然に買い集めた株をナポレオン敗北後に株価が急上昇した時点で売り切り、資産を2500倍に増やしました。
このネイサンの孫のウォルターは、グループの投資銀行で働いていましたが、幼少時より動物学に傾倒し、7歳の時には博物館を作ると両親に宣言、10歳の時には一族の広大な敷地に彼の最初の博物館を開きました。ロスチャイルド家の財力で集めたコレクションは、1892年の一般公開時には、4万点以上の鳥類剥製標本、50万点以上の昆虫標本になっていたそうです。
野鳥と昆虫の絵柄のロスチャイルドバードの食器も、ウィーンのロスチャイルド家よりパリ、ロンドンなどロスチャイルド各家に伝えられ、幼少時のウォルター・ロスチャイルドもきっと目にしたに違いありません。このシリーズはいまでも世界のロスチャイルド家で使用されているとのことです。
|